減感作療法
1.減感作療法って何?
1.1 アレルギーって?
アレルギーは、私たちの体を守る「免疫」という仕組みが過剰に反応してしまう病気です。本来であれば無害なはずの物質(アレルゲン)を敵とみなして攻撃してしまうため、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみ、皮膚のかゆみ、じんましん、喘息などの症状が現れます。
1.2 減感作療法とは?
減感作療法は、アレルギーの原因となる物質(アレルゲン)を少しずつ体内に投与することで、アレルギー反応を抑える治療法です。体内にアレルゲンを少しずつ取り入れることで、免疫が慣れていき、過剰な反応をしなくなるように訓練します。
1.3 アレルギーの根本的な改善を目指せる治療
従来の対症療法とは異なり、根本的な体質改善を目指せる可能性があります。症状を和らげるだけでなく、アレルギー体質そのものを改善する効果が期待できます。
2.減感作療法の種類
2.1 舌下免疫療法(シダキュア、ミティキュア、アシテア)
舌下免疫療法は、アレルゲンを含む薬を舌の下に置いて溶かす治療法です。毎日1回、自宅で行うことができます。自宅で毎日薬を服用するだけで治療が続けられるため、通院の負担が軽減されます。ただし、3年以上の継続が必要となります。
2.2 皮下免疫療法(ヒスタグロビン)
腕の皮下にヒスタグロビンを注射する。ヒスタグロビンは、減感作療法の一種で、アレルギー体質そのものを改善する可能性のある治療法です。体内にヒスタグロビン製剤を投与することで、アレルギー反応に関わる細胞の働きを調整し、症状を改善します。
3.舌下免疫療法を受けられる方
3.1 対象となるアレルギー疾患
舌下免疫療法は、以下のアレルギー疾患に有効です。
- スギ花粉症
- ダニによるアレルギー性鼻炎・気管支喘息
3.2 こんな方にオススメ
- アレルギー症状がつらい方
- 将来的にアレルギー体質を改善したい方
- 仕事上、眠気が出る抗ヒスタミン薬を服用できない方
- 薬を飲み続けることに抵抗がある方
3.2 舌下免疫療法を受けられない方
以下のいずれかに該当する方は、減感作療法を受けられない場合があります。
- 重度の心臓病、腎臓病、肝臓病などの患者さん
- 妊娠中の方
- 免疫抑制剤を服用している方
- アレルゲンに対する重度の反応を起こしたことがある方
4. 舌下免疫療法について
4.1 治療期間
舌下免疫療法は、3年以上の継続が必要となります。途中で治療を中止してしまうと効果が得られなくなる可能性があります。
4.2 副作用
舌下免疫療法では、口腔内のかゆみや腫れ、まれに喘息発作様の全身症状の副作用が現れることがあります。
4.3 費用
減感作療法は、健康保険適用となる治療です。3割負担の方で月数千円の費用がかかります。
5. 舌下免疫療法のメリット・デメリット
5.1 舌下免疫療法のメリット
- アレルギー症状を根本的に改善する可能性がある
- 長期的な効果が期待できる
- 自宅で簡単に治療できる
- 通院の頻度が少ない
- 痛みや注射の跡が残らない
5.2 舌下免疫療法のデメリット
- 治療期間が長い
- 費用がかかる
- 対象はスギとダニのみで、他のアレルゲンには対応していない
6. 皮下免疫療法(ヒスタグロビン注射)を受けられる方
6.1 対象となるアレルギー疾患
- ヒスタグロビンは、アレルギーの原因物質の種類を問わず有効です。
6.2 こんな方にオススメ
- 内服薬による症状の改善が乏しい方
- 眠気の副作用が強く出現する方
- スギ、ダニ以外のアレルギーをお持ちの方
- 多くの種類の物質に対してアレルギー反応を認める方
- 薬を飲み続けることに抵抗がある方
6.2 減感作療法を受けられない方
以下のいずれかに該当する方は、減感作療法を受けられない場合があります。
- 重度の心臓病、腎臓病、肝臓病などの患者さん
- 妊娠中の方
- 免疫抑制剤を服用している方
- アレルゲンに対する重度の反応を起こしたことがある方
7. 皮下免疫療法(ヒスタグロビン注射)について
7.1 治療期間
皮下免疫療法(ヒスタグロビン)は、週に1~2回の皮下注射による投与を計6回、1ヶ月前後の期間にて治療が終了します。十分な効果のあらわれない場合には、更に6回追加することがあります。最大限の効果を持続させるために、治療終了後、3~4か月に1回の追加投与が推奨されています。
7.2 副作用
ヒスタグロビン注射は副作用が少ないですが、まれに眠気、めまい、頭痛、嘔吐、注射部位の発赤や痛みなどが現れることがあります。
7.3 費用
ヒスタグロビン注射は、健康保険適用となる治療です。3割負担の方で1回1,500円程度となります。
8. 皮下免疫療法(ヒスタグロビン注射)のメリット・デメリット
8.1 皮下免疫療法(ヒスタグロビン注射)のメリット
- アレルゲンに対する体質改善が期待できる
- 他の減感作療法と併用できる
- 比較的短期間で効果が出る
- アレルゲン自体を体内に投与するアレルゲン免疫療法と比較して、アナフィラキシーを含む副作用の発生頻度が少ない
8.2 皮下免疫療法(ヒスタグロビン注射)のデメリット
- 効果には個人差がある
- 費用が比較的高い
- 副作用が出ることがある
- ヒスタグロビンは国内の献血血液から製造される血液製剤で今まで1例も感染例の報告はないが、事前に同意書の取得が必要
9. まとめ
減感作療法は、アレルギー症状を根本的に改善する可能性がある治療法です。治療期間は長いですが、長期的な効果が期待できます。自分に合った治療法を選択するためには、医師に相談し、症状や生活スタイルなどを考慮することが大切です。
用語解説
- アレルゲン:アレルギーの原因となる物質
- 免疫:体を守る仕組み
- 抗体:免疫システムが作り出すタンパク質
- ヒスタミン:アレルギー反応に関与する物質